1. ライカは犬種? 名前?
宇宙犬ライカの犬種、名前はなんでしょうか?
1957年11月3日、地球軌道上を周回したのは犬でしたね。
ソビエト連邦の宇宙船スプートニク2号(直径2.3メートル、高さ4.3メートル、重さ504キロの)に搭乗しました。
それは一般的には「ライカ」と呼ばれる犬。
私はずっとそれは名前なんだろうと思ってました。
しかし、「ライカ」というのはロシアの北部で飼われている猟や犬ぞりに使われる犬全般を指すそうです。
ロシアの犬といえばシベリアンハスキーやサモエドが思い浮かびます。
シベリアンハスキーは「ヤクート・ライカ」、サモエドは「サモエド・ライカ」と呼ばれるそうです。
打ち上げの当初、報道はかなり混乱。
打ち上げ直後の報道では、「クドリャフカ」という名のスピッツなどと伝えられました。
「クドリャフカ」は「巻き毛ちゃん」という意味なんですね。
打ち上げから数日後です。
AP通信がソ連からの情報として「犬の本当の名前はライカである」と報じました。現在ではロシア国内の記念碑にも「Лайка」(ライカ)と書かれています。
※写真 wikipedia より
2. なぜ犬が選ばれたのか
アメリカで当初宇宙に送られたのは猿でした。
人間により近いのは猿ですからね。
ソビエトでも当初猿が候補に上がっていました。
猿はじっとしていることが得意ではなく、また、生体反応を見るため体に繋がれたコード類を引きちぎってしまう恐れがあったため、犬が選ばれたようです。
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3. ライカより先に宇宙に飛ばされた犬
ライカが初めて宇宙に行った犬という事実は、もう少し正確にいうと「地球軌道を周回した、初めての犬」です。
地球軌道に届かず、弾道飛行のロケットに乗せられた犬はライカの前にもいるのです。
・デジク、ツィガン、リサ
1951年7月22日に初めて大気圏外に出た犬。高度100kmに達した後、無傷で帰還。
・リサとルィジク
1954年6月2日に上空100kmまでの高高度飛行を行った。
・スメラヤとマルィシュカ
スメラヤは9月に飛行を行う予定であったが、発射直前に脱走してしまった。科学者たちはスメラヤがオオカミに食べられることを恐れたが、翌日発見され、マルィシュカとともに宇宙へ行った。
・ボリクとЗИБ
ボリクは1951年9月の発射前に脱走。代わりに野良犬が捕まえられ、ЗИБ(ロシア語で「行方不明のボリクの代理 ― Замена исчезнувшему Болику」の略)と名づけられ、宇宙へ送られた。
・アリビナとツィガンカ
高度85kmでカプセルから放り出されたものの、無事に着地した。
4. ライカは野良犬だった
ライカはもともとモスクワを徘徊していた野良犬だったようです。
宇宙船のカプセルの大きさに合わせて体長35センチ以下、体重は6キロ以下の「メス」の条件でモスクワ市内で狩られたようですね。
そう、「ライカ」はメスです。メスであることには理由があって、宇宙船がとても小さく(全長2メートルしかない)オスの犬では排泄の姿勢が取れなかったからです。
このようにモスクワの野良犬だった犬が軌道周回に成功すると、ロシア原産の犬種である「ライカ」と名付けられたのは政治的な演出だったのでしょうね。
当時はアメリカとソ連の宇宙開発競争が激しく、そのような場合にはナショナリズム高揚が目的になりますから、出自は野良犬であっても、由緒正しいロシアの「ライカ」であるといいたかったのではないでしょうか。ソ連が後付けで「ライカ」といい出しているのを見るとそう思います。
5. 生きて帰れないことはわかっていた
スプートニク2号には大気圏再突入のための機能や装備は用意されていませんでした。その当時大気圏再突入の技術は確立されていなかったためです。
「ライカ」ははじめから片道切符でした。
計画では「ライカ」は数日宇宙に滞在後、薬入りの餌を与えられて安楽死させる予定でしたが、イギリスなどでは大きな反対運動が巻き起こったそうです。
デイリーミラー紙には、「犬は死ぬ。我々には助ける術がない」という見出しが掲げられました。英国動物虐待防止協会もソ連大使館に抗議するよう人々に呼びかけています。ところが、ソ連政府はなぜこれほど批判を浴びるのか理解できなかったようで「ロシア人は犬を愛している これは虐待を目的とするものではなく、人類の利益のためである」と声明を出しています。
6. 宇宙開発競争
ソビエトがさまざまな批判のあるなか、宇宙開発を急いだのは、第二次世界大戦後にも冷戦中のアメリカとソビエトのあいだの宇宙開発競争の激化が背景にありました。
宇宙技術は軍事技術に転用可能であったためナショナリズムや世界中へのイメージ向上に大きな影響があるとされていました。
競争の初期ではソ連が優勢に進んでいましたが、ご存知の通りアポロ11号計画によって1969年7月20日にニール・アームストロングとエドウィン・オルドリンによって月面着陸がなされ大きな成果を残しました。
その後、あまりにも費用がかかりすぎる月面の有人探査は政治的な意味を失い、競争は一段落しました。1957年から1969年の期間、競争があったと言われています。
7. 訓練の様子
ライカが入らないといけないカプセルの大きさは半径32センチ、長さ80センチほど。
このため、ライカは小さなスペースにじっとしている訓練が施されました。
小さな窓があるだけのカプセルを日を追うごとに小さくしていき慣れさせる。
宇宙船の加速に慣れるために遠心分離機に入れられたりもしたそうです。
大気圏外の生体反応を調べるためのセンサーも埋め込まれたようですね。
8. ライカ打ち上げの前日
打ち上げの前日です。
ライカの計画に深く関わっていたヤズドフスキー博士はライカを自宅に連れ帰りました。
博士の子ども達と遊ばせたそうです。
博士はライカが生きて帰れないことを知っており、だからこそライカに素晴らしい家族のような体験をさせてあげたかったと言っています。ライカの発射日には博士のチーム全員でライカの鼻にキスをして「よい旅を。」と見送ったそうです。
9. ライカの最後はいつ?
ソ連は計画後数年にわたって「ライカは生きたまま地球軌道を周回した」と主張していました。
しかし、ライカの死因については以下のことがわかっています。
初期の公式発表:ソ連は当初、ライカが数日間生存し、酸素不足で安楽死したと発表していました。しかし、後にこれが事実ではないことが明らかになりました。
実際の死因:1990年代にソ連の科学者たちが明かしたところによると、ライカは打ち上げ後数時間以内に過熱とストレスによって死亡したとされています。具体的には、以下の要因が指摘されています:
過熱:スプートニク2号の温度制御システムが故障し、機内の温度が急激に上昇しました。これによりライカは熱中症に陥りました。
ストレス:打ち上げ時の振動や騒音、無重力状態への適応が大きなストレスとなり、ライカの体に過負荷がかかりました。
ミッションの準備不足:スプートニク2号は急速に準備されたため、温度制御や動物の生存を確保するための十分なシステムが整っていなかったことが、ライカの死亡に寄与したとされています。
歴史的意義と倫理的議論:ライカの飛行は宇宙探査の歴史における重要な一歩であった一方で、動物実験の倫理に関する議論も呼び起こしました。ライカの犠牲はその後の宇宙開発における動物実験のあり方を見直すきっかけとなりました。
ライカの死は、宇宙探査の進展に大きく寄与した一方で、動物実験の倫理的問題を再考する重要な機会ともなりました。彼女の犠牲は現在も多くの人々の記憶に残り、宇宙探査における倫理の重要性を喚起し続けています。
10. ガガーリンの成功「地球は青かった」
ライカの飛行から4年後の1961年4月12日。
ガガーリンはボストーク3KA-2で世界初の有人宇宙飛行に成功します。
108分で地球を周回し、無事に帰還、世界初の宇宙飛行士になりました。そして「地球は青かった」という名言を残します。
むりやり宇宙に送られたライカには地球は何色に見えたでしょうか。
11. 宇宙飛行に成功し、帰還した猫
実は猫も宇宙に送られています。
パリの野良猫だったフェリセット。
フェリセットは1963年10月に、フランスの観測ロケットにのせられました。
過酷な耐G訓練や、さらには頭部には電極がセットされるなど辛い経験をしたフェリセットは無事に帰還しますが、その3ヵ月後に、脳の解剖調査という名目で安楽死処分となっています。
12. さまざまな実験動物
もちろん、犬や猫だけではなくさまざまな動物が宇宙に送られています。
そして貴重なデータを残してくれているのです。
地上でもさまざまな動物実験が賛否がありながら継続しています。
その是非や動物の権利、一方で人類への貢献のはかりをいつも考え続ける必要がありますね。
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13. ライカはマンガや映画にも!
宇宙犬ライカは衝撃的なストーリー。それだけにマンガや映画のモチーフに使われてもいます。
「ライカの星」吉田真百合
「滅べ人類。ソ連の実験で宇宙に飛ばされた悲劇の犬・ライカの復讐譚。
不条理に抗って生きる、すべての者へ捧げるレクイエム。
1957年のソ連の実験によって、スプートニク2号に乗せられ、宇宙に放たれた犬・ライカ。
彼女は冷たい暗闇の中でその命を失うも、突如現れた神から新しい体を与えられる。
人間への復讐に燃える彼女は、種を増やし、文明をつくり、凄まじいほどの軍事力まで手に入れた。
数年後、ライカは仲間の犬を引き連れ、母星・地球にむけて出発する。
自分を追いやった人類を滅ぼし、再び故郷で暮らすために――。
「生と死」、「愛と憎しみ」など、心を抉るテーマに果敢に挑んできた吉田真百合のデビュー作。
ポップで親しみやすい絵柄と、心の奥底にある欲望を描いた内容とのバランスが癖になる、
唯一無二のピュアでダークネスなコミック!」(Amazonより)
「星のクドリャフカ」清澄 炯一
1957年 ロシアの宇宙船スプートニク2号によって地球周回軌道上に行ったライカ犬(クドリャフカ)の実話を元に描いた創作漫画。
スプートニク2号の打ち上げまでのわずかな時間を少女と過ごすことになったクドリャフカは…。
(※こちらの商品は以前、コミックマーケット、コミティアで販売された同人誌です。)(Amazonより)
ドキュメンタリー映画「犬は歌わない」
「冷戦時代の1950年代と現代のモスクワを背景に、街で暮らす犬たちと社会の関係を捉えたドキュメンタリー。
宇宙を旅した犬ライカの映像とソ連の宇宙開発計画のアーカイブ映像、通りをさまよう犬たちの視線で撮影された映像などから、社会のあり方を問う。
エルザ・クレムザーとレヴィン・ペーターが監督とプロデューサーを務め、『裁かれるは善人のみ』などの俳優アレクセイ・セレブリャコフがナレーションを担当している」(youtubeより)
興味を持ったら一度読んだり、観たりするのもいいですね!
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